
“つまみ細工を日常に”──アロマが香る、和紙のモビールをクルマの中に
今回ご紹介するのは、千葉県松戸市を拠点に活動するつまみ細工職人・藤井彩野さん。伝統技法を現代の暮らしに取り入れた「紙ノ香(かみのか)モビール」は、和紙でつくられたつまみ細工の花びらにアロマをまとわせ、見た目と香りの両方で楽しめる、藤井さんが試行錯誤の末に完成させた渾身のライフスタイルアイテムです。 “ #くるまデコ クリエイターのものづくり”では、創造性あふれる作品やアイテムと、それをつくり出すクリエイターのかたがたに注目し、その魅力をお届けしています。
目次

つまみ細工職人・藤井彩野さん
香る、揺れる、咲きこぼれる──“kaminoka -紙ノ香- モビール”の魅力

つまみ細工は、江戸時代から伝わる東京都指定の伝統工芸でもあり、和装の櫛やかんざしを彩る装飾技法のひとつ。藤井彩野さんが手がける「kaminoka -紙ノ香- モビール」は、つまみ細工の素材に“和紙”を用いたライフスタイルアイテムです。
本来、つまみ細工の多くにはシルク布が用いられ、その生地ツヤと繊細さで美しい仕上がりになるのが特徴です。

しかし、このアイテムではあえて“和紙”を使用しました。和紙特有の軽やかな質感が特長で、「kaminoka -紙ノ香- モビール」はわずかな空気の流れでもゆらゆらと優雅に揺れて、見る人の心を癒します。

さらに、和紙ならではの特性を生かし、花びらにアロマオイルを直接垂らすことで、ふんわりと広がる香りを楽しめます。
また、藤井さんは「360度どこから見てもかわいい」と思える構造にこだわり、細部まで丁寧につくり上げています。全方向から楽しめる美しいデザインで、空間を華やかに彩ります。
和紙はシルク布と比べると伸縮性が少ないため、花びら一枚一枚に丸みを持たせることが難しく、試行錯誤の末に完成したそうです。
「知らない」と気づいた日本文化──藤井彩野さんが職人を目指すまで
「語学研修中に日本のことを聞かれて、何も答えられなかったんです」──。
大学時代のそんな経験が、藤井さんの転機でした。帰国後、日本文化や伝統工芸に興味を抱き、偶然出会ったのがつまみ細工で、その繊細さと美しさに心を奪われたといいます。

こちらは藤井さんがつくられた振袖用のかんざし
当時、つまみかんざしの世界では職人が減少し、後継者不足が深刻であることを知り、「この技術を絶やしてはいけない」との想いから、独学で技術の習得をスタート。ワークショップへの参加や、自宅にあったかんざしを分解して構造を研究するなど、地道な努力を重ねて腕を磨いていきました。

「バラバラにできるかんざしがなくなってからは、勤めていた呉服店での商品を観察して研究していました」と、藤井さんはその当時を振り返ります。
暮らしに咲く、日常になじむ“つまみ細工”たち
本来、つまみ細工の多くは羽二重(はぶたえ)という薄いシルク布でつくられますが、藤井さんの考え出すアイテムではさまざまな素材が使われています。
その原点となったのは、呉服店でお客様からかけられた「着物のハギレで何かつくれない? 」という一言。従来の常識にとらわれない柔軟な発想から、藤井さんの新しいアイテムが生まれています。
和装の機会の減少に伴い、近年ではつまみ細工は七五三・成人式・結婚式などのハレの日を彩る髪飾りとして親しまれることが多くなっています。こうしたつまみ細工を、現代の暮らしにも取り入れてもらうために、アクセサリーやインテリア雑貨など、日常づかいしやすいアイテムも手がけています。

「六花」_ピアス_イヤリング

「千里花」_ピアス_イヤリング

ワークショップでつくる七五三用のかんざし
なかでも、藤井さんのアイテム「紙ノ香―一輪挿し」は、自動車販売会社のお客様用カタログギフトに選ばれるなど、作品の美しさと実用性が高く評価されています。

「kaminoka-紙ノ香-一輪挿し」
車内に、ひとしずくの和を
『暮らしとくるま』編集部では今回、「kaminoka-紙ノ香」シリーズのアイテムを使って、クルマの荷室に“和”のくるまカフェ空間を演出してみました。

今回使用したアイテム
藤井さんのアイテムを配置するだけで、クルマの荷室がまるで移動する“和カフェ”のような、心やすらぐ空間に早変わりです。和紙の柔らかな風合いと、風に揺れる様子が空間をやさしく包み込むようです。


ドライブやアウトドアのシーンで、香りのアクセントを添えるのもおすすめです。

モビールは風がそよぐたび、美しく揺れる姿が印象的
さらに、和紙にアロマがしみ込んでいることで、花びらの色合いが変化していく楽しみもあるのだとか。
お茶やお菓子、そして和の雰囲気を演出する小物をそっと添えて──。

クルマで過ごす時間が、ほんの少し特別なものに変わりそうです。

ちなみに藤井さんご自身の愛車は、スズキ ジムニーだそう。雪道に強く、出張だけでなくスノーボードといったウィンターレジャーにも活躍しているとのことです。ジムニー×和のコラボレーションもすてきな空間になりそうですね。
つまみ細工を日常に
「“伝統工芸”という肩書きがつかなくても、魅力的なものだと伝えたい」。藤井さんはそう語ります。技術を次世代につなぐため、ワークショップの開催や職人チームでの活動も積極的に展開しています。

ワークショップのサンプル。すてきなデザインばかりです
すてきだなと感じたものが、たまたま伝統工芸品だったと思ってもらえるアイテムをつくり、つまみ細工との“出会いの場”を増やすことが、藤井さんの願いです。

この技術が100年先にも受け継がれるよう願って、藤井さんはつまみ細工をつくり続けています。「非日常になってしまったつまみ細工を、現代の暮らしの中で再び“日常”に合うように、つなげる役割を果たしたいです」と藤井さん。
その想いが、当初より藤井さんのものづくりの支えとなっているのかもしれません。
小さな和の彩りを、暮らしにもクルマにも
美しいものを日常に取り入れることで、暮らしが豊かになります。藤井さんのつまみ細工は、そんな毎日にやさしく寄り添ってくれるようなアイテムばかりです。
藤井さんのアイテムで、お気に入りの香りとともに、クルマの中に小さな和の飾りを添えてみませんか?
ドライブのひとときが、きっといつもより心地よく、すてきな時間に変わっていくはずです。

Instagram: つまみかんざし彩野
ショップ: http://kanzashi-ayano.com/items/
つまみかんざし彩野HP: http://kanzashi-ayano.com/

