頭の中のイメージを“箱庭”に詰めこんで――DIYでつくる、自分だけのクルマ時間
小さいころから、頭の中に思い描いたものを形にするのが大好きだったというsnoocky1978さん。DIYでつくり上げた日産 キャラバンの車内は、「外国のおばあちゃん家」をテーマに、家具や雑貨も一つひとつ選びながら完成させた “箱庭”です。こだわりの詰まったその空間は、家族との思い出を育む場所であり、ときには日常を離れて一人の時間を過ごす"シェルター"でもあるのだとか。そんなsnoocky1978さんの頭の中のイメージを少しずつ形にしていくDIYの楽しさと、車中泊だからこそ味わえる旅の魅力について伺いました。
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テーマは「外国のおばあちゃん家」。頭の中のイメージを少しずつ形に
―snoocky1978さんは、ほとんどご自身で内装をつくられていると伺いました。現在乗っているキャラバンは、どんな理由で選ばれたのでしょうか?
キャラバンは、「高さのあるクルマ」ということで選びました。
このクルマに出会う前からずっと家族で旅を楽しんでいたのですが、車内は天井が低くて、かがみながら着替えや食事の用意をしていました。すると、腰が痛くなってしまって。だから“中でまっすぐ立てる高さがあること”というのが一番の条件で、車種にこだわりはありませんでした。
―クルマは、まるでお家のようなとてもつくりこまれた内装になっていますね。
設計図を書いてから制作にとりかかったのでしょうか?
紙に設計図を書くというのは一切しないんです。まず「外国のおばあちゃん家」というテーマを決めて、頭の中でそのテーマに沿って完成形をイメージしました。
次に、家にある小物をかき集めて「これを置きたいな」というところから、周りに置くものを逆算して考えていくんです。たまたまオレンジ色のかわいい布を見つけたので、そこからその布に合うカゴを置いて……という風に決めていきました。
―頭の中のイメージをそのまま形にしてしまうなんて、すごいですね!
もともと頭に思いついたものを形にしていくことと、それを実際につくりながらだんだんイメージに近づいていく過程が好きなんです。キャラバンみたいな限られた車内空間には“箱庭”的要素があって、その箱庭に合うものを探して詰めこんでいく。頭の中でイメージしていた「この隙間にこのアイテムが入るんじゃないか」がピタリとはまると「うわ! きた! 」と快感なんです(笑)
―その感覚がDIYの楽しさなんですね。
そこに、さらに一つのアイテムに2WAYとか3WAYみたいな機能を持たせるのも好きなんです。ソファーにもなるし、ベッドにもなるみたいな。そういう工夫をしていくのがさらに楽しいですね。
畳んでいるときはソファーの土台になる
広げるとベッドスペースになる
「これ好きだな」と思うものから車内空間に取り入れていくというのは、DIY初心者でも参考になりそうですね。もともとDIYがお得意だったのでしょうか?
小学生のころから、近所に住んでいる幼なじみの男の子と2階建ての秘密基地をつくったり、リカちゃん人形を乗せる船をつくったりしていました。“負け戦はしない”というポリシーでつくれそうにないものには手を出さないんですけど、つくれそうなものを積み重ねてきた結果、人がつくったものは私にもつくれるんじゃないかという、全然根拠のない自信を持っていますね(笑)いろんなものをつくってきたので、DIYのできる幅や技術も上がっていって。その結果、釘が折れちゃったとか、ネジが曲がっちゃったとか、心が折れそうになるトラブルをリカバリーする力まで身に付いたと思います。
「やれた」と思えた瞬間。20日間のDIY生活がくれたもの
―キャラバンの内装の完成までどれくらいかかりましたか?
計算してみたら、だいたい20日間ですね。好きなことをしているときの集中力がすごくて、休みの日は、朝から夕方までトイレもほとんど行かずにずっとクルマで作業して、家に戻って家族にごはんを手早くつくって、またクルマに戻る、みたいな生活をしていました。
でき上がったときは「本当にできた。やれた! 」という達成感がありましたし、同時に終わってしまう寂しさもありましたね。
―密度の濃い20日間でしたね。これまでやってきたDIYと違うところはありましたか。
ありました。じつは私、4年前に交通事故にあってしまったんです。そのとき利き腕を粉砕骨折して、病院の先生には「後遺症がしっかり残るくらいのケガですよ」と言われていました。そのときに思ったのが、大好きなDIYやこれまで当たり前にできたことができなくなるかもしれない——それが本当に辛くて。「あきらめたくない」という気持ちで一生懸命リハビリをがんばって、しっかり治療にも向き合いました。
そのおかげで少し痺れはあるんですが、ほとんど元通りに動かせるまで回復しました。そして「またDIYができるのかな」という少し不安を抱えながら始めたのが今回のキャラバンの改装でした。私にとっては挑戦という意味合いもあったんです。
作業は内装を剥がすところからスタート
家族には、「手伝いなしで、一人でやるから」って宣言していたので、本当に最後まで誰の手も借りずに完成させられたときは「私一人でできた。この腕でもまたつくれたんだ! 」って、本当にうれしかったです。
完成したキャラバンの車内
――キャラバンの完成は、DIYの成功というだけではなく、ご自身にとって大きな挑戦を達成した瞬間でもあったんですね。
誰と過ごすかで変わる、車中泊旅の魅力
―それでは、そんなキャラバンで過ごす車中泊旅の魅力について教えてください。
私、もともとは旅の計画をきっちり立ててしまう癖があるんです。それもいいのですが、車中泊旅のいいところは、行き先を細かく決めたり、その日泊まるホテルを前もって計画したりしなくていいところです。自分の計画癖を無理やり止めるというのかな。
走れるとこまで走って、泊まれるとこで泊まって、入れる温泉に入ってみたいな。“無計画を楽しめる”ところがいいなと思います。道中でも、“あ、いい景色がある”とか“おいしそうなものが売ってる”と思ったら、時間を気にせず立ち寄れる。クルマが単なる移動手段になるだけじゃなくて、クルマだからこそ旅先に向かう道中が楽しくなるんだと思います。
―ご家族との車中泊旅だけでなく、一人旅もされるそうですね。それぞれどんなふうに楽しまれていますか。
家族で旅をするときは、ゲームみたいに地図帳を広げて、そこに一人が鉛筆を立てて、もう一人が地図をくるくるって回して、お互い目をつぶってパンって倒れた芯の先に行くとか。娘と息子がじゃんけんで勝ったほうに曲がる、みたいに家族を巻き込めるように工夫しています。そうすると、みんな楽しんでくれていましたね(笑)
家族とは、キャンピングカーでお出かけすることもあるそう
一人旅だと、とにかく自分が好きなこと、おいしいご飯と硫黄の温泉があるところに行きます(笑)子どもたちももう中高生なので、旅の最中に電話はしますが、あとは時間を気にせず気ままに過ごしています。クルマの中では誰にも気をつかわないし、その土地のおいしい食べものを仕入れて過ごしたり、きれいな景色を独り占めできたり、ちょっと疲れたらそのまま寝られるし。一人旅はそういうところがいいですね。
一人旅のときは愛犬のモリー君と一緒にでかけることが多いそう
―snoocky1978さんにとって、一人の時間はリフレッシュという面も大きいのでしょうか?
そうですね。普段はどうしても家のこととか、いろいろ考えることが多いので、
日常を忘れて自由にできる時間って大事だなって思います。自分の心に余裕がないと、家族が遊びに出かけるときに笑顔で「いいよ、行っておいで」と言えなくなってしまうときがあるんですよね。短い間でも自分だけの自由な時間をすごせると、人にやさしくする余裕も生まれるんです。キャラバンは私にとって、逃げ場、自分一人の時間をつくるシェルターでしょうか。家には他のクルマもありますが、キャラバンは基本的には私だけが使うクルマなので、やっぱり特別ですね。自分らしく自分のことだけをできる心の拠り所だと思います。
“箱庭”から広がる、自分だけの旅のかたち
頭の中に描いたイメージを少しずつ形にし、限られた車内空間という“箱庭”に丁寧に家具や小物を詰め込んでいく————その過程は、snoocky1978さんにとって大きな挑戦でした。そしてできあがった空間は、あるときは家族との思い出をつくり、あるときは自分だけの居場所になりました。家族と笑いあう旅も、一人で心をほどく時間も、そのすべてがこの小さな箱庭から広がっていくのです。
