1

公開:2021.2.9
更新:2021.5.14

今、知っておきたい車内の換気! エアコンと外気導入で空気の入れ替えを!

新型コロナウイルス感染症の拡大に翻弄され、依然として収束の見通しが立たない中、密を避けようと自動車での移動を選ぶ方もいるのではないでしょうか。新型コロナウイルス対策にはこまめな換気が重要といわれていますが、複数人でクルマに乗車した際の換気はどうしたらいいのか、わからない人も多いはず。そこで2020年11月に理化学研究所がスーパーコンピューター「富岳」を利用して実施した研究結果をもとに、車内における最適な換気方法について紹介します。

目次

ホコリやニオイ、熱気は、窓ガラスを開ければ除去できるけれど……

クルマの中は、とても狭い空間なので、ホコリやニオイが溜まりやすいだけでなく、何もしていないと空気がこもりがち。

夏場に長時間駐車していると熱気が充満して、エアコンを全開にしてもなかなか涼しくなりません。そんなときは窓ガラスを大きく開けてクルマを走らせると、ホコリやニオイは一気に飛んでいきますし、熱気も早めに抜けてエアコンが効きやすくなります。とりわけホコリは、窓から吸い出されていく光景を目にすることができるので、窓開けの効果を実感することができます。

しかし、寒い冬場も同じように窓を全開にするのは難しいですよね。

 

また、車内に付着している汚れや、細菌・ウイルスなどは窓ガラスを開けただけでは除去が難しいので、基本的には専用クリーナーや除菌スプレー、ウイルス除去スプレーなどを使って除去する必要があります。

2

車内のホコリ、ニオイ、熱気などは窓ガラスを開けて走ると比較的簡単に除去できるが、汚れや細菌、ウイルスなどは換気では除去できないので、とても厄介な存在なんです。

新型コロナウイルスの感染経路は、飛沫感染と接触感染がメイン

皆さんがよくご存知のインフルエンザウイルスは、飛沫や接触によって感染するといわれていますが、とりわけ、ウイルスを含んだ咳やくしゃみの飛沫は、インフルエンザウイルスの主な感染経路となっています。

現在、猛威を奮っている新型コロナウイルスも、一般的には飛沫や接触によって感染するといわれています。

 

車内のように閉鎖された空間で、近距離で多くの人と会話するなどの環境では、咳やくしゃみなどの症状がなくても感染を拡大させるリスクがあるとされています。WHOは、一般に5分間の会話で1回の咳と同じくらいの約3,000個の飛沫が飛ぶと報告しています。

複数人でクルマに乗るときは、必ずマスクの着用をしましょう。

 

[参考:厚生労働省 新型コロナウイルスに関するQ&A

3

理化学研究所がスーパーコンピューター「富岳」を利用して実施した研究結果。図はタクシーの車内において後席左の乗客が咳をしてから20秒後の飛沫飛散を示した様子(赤:車内浮遊粒子、青:車外浮遊粒子、緑:壁近傍粒子)。<提供:理化学研究所・神戸大学,協力:トヨタ自動車・国土交通省>

エアロゾル感染とは? ~飛沫感染だけでなく“飛沫核”感染にも注意~

新型コロナウイルスは、一般的には飛沫や接触によって感染すると紹介しましたが、いわゆる「3密」と呼ばれる特殊な環境下では「飛沫核感染」もあると考えられています。この飛沫感染と飛沫核感染を包含して「エアロゾル感染」といいます。

エアロゾルとは、気体中に液体または固体の微粒子が広がった状態を指しています。ホコリや花粉、霧なども含まれ、この空気中をただよう微粒子内に含まれた病原体を介して感染することを「エアロゾル感染」といいます。この微粒子が、水分を含んだ直径5μm以上だと飛沫といい、飛沫が乾燥して小さくなったり、直径4μm以下だと飛沫核といいます。飛沫核は小さいため空気中に長時間ただようことから、密閉空間では換気が大切といわれています。

 

[参考:東京大学 保険・健康推進本部 保健センター)

外気導入とエアコンの併用で、車内は約1分半でリフレッシュ!

新型コロナウイルスは、車内のように「3密」になりやすい空間においてはエアロゾル感染のリスクが高まるといわれています。理化学研究所はスーパーコンピューター富岳を利用して、「室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測とその対策」と題する研究成果を発表。この研究の中には、タクシー内の換気性能の評価と、窓開けやパーティションの導入などによる対策の効果に関する記載があります。

 

具体的には、3 人乗車時に時速40㎞で走行している状況下で、エアコンを外気導入モードに設定し、窓を開閉しながらエアコンを通常レベル(最大風量の半分)と、最大レベルで作動させた場合の換気性能や飛沫飛散の様子をシミュレーションしています。

結果は図3の通り、時速40kmで走行中、エアコンを通常レベルにして窓を閉めきった場合、実換気量は1 時間当たり177㎥。シミュレーションに用いられたタクシーの車内の総体積は4.2㎥なので、1 時間で車内の空気が40回程度入れ替わった計算です。つまり、この条件では約1 分半で車内の空気をリフレッシュすることができるわけです。

6

換気時は外気導入モードで! エアロゾル感染対策として積極的に利用しよう!

車内の換気は、窓を開けるよりエアコン風量を増やす方が効果的

この研究では、窓ガラスの開閉についてもレポートされていて、後席左の窓を5cm開けた場合の実換気量は1 時間当たり223㎥。すべての窓を閉めて走行した場合に比べて25%向上しているものの、上乗せ効果は相対的に少ない結果となっています。また、後席左に加え、運転席の窓を5cm開けても実換気量は増えないことが判明しています(図1内③参照)。

一方で窓を閉めたままエアコンの風量を最大に引き上げた場合は、実換気量が通常レベルの2 倍近くに増えることが検証されました(図1内①参照)。したがって、理化学研究所では「エアコン風量に余裕がある場合は、窓を開けるよりエアコン風量を増やした方が効果的である」との見解を示しています。

5

車内の換気を行う際は、窓ガラスを開けるよりエアコンの風量を増やした方が効果的!

外気導入モードを生かすには、エアコンフィルターを見直して

今回、紹介した理化学研究所の研究は、タクシーを想定して行われたものですが、私たちが普段利用しているクルマにも当てはまるのではないでしょうか。

とはいえ、外気導入モードで走行すると、新鮮な空気とともにチリ、ホコリ、花粉、排ガス臭などが車内に入り込むのではないかと危惧する方もいるでしょう。しかし、現在は大半のクルマにエアコンフィルターが装備されているので、基本的には心配はいりません。とりわけ、プレミアムタイプなどと呼ばれている高性能エアコンフィルターは、優れた脱臭性能や除塵性能、抗菌・防カビ、抗アレルゲンなどの付加価値を備えているので、これを機にエアコンフィルターを新しいものに交換するなど、メンテナンスをしてみてはいかがでしょうか?

6

換気時は外気導入モードで! エアロゾル感染対策として積極的に利用しよう!

クルマに乗るときに気をつけたい新型コロナウイルス対策まとめ☝

✓ 換気をするときは、エアコンの風量を通常レベル(最大風量の半分)以上にし、外気導入モードで使いましょう。
⇒約1.5分で新鮮な空気に入れ替わります。

✓ クルマに乗るときもマスクの着用を。
⇒飛沫・エアロゾルの発生を減少させることで、感染リスクは低減します。

この記事をシェア