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公開:2023.8.21
更新:2023.8.21

路面が音楽を奏でる!「メロディぺーブ」って、どんな道路?

みなさんは音楽を奏でる道路を知っていますか? 通称メロディーペーブと呼ばれているこの道路は、全国のさまざまな場所に設置されています。これを実際に体験した方は、走行中の意外な音楽に驚きと興味を惹かれるのではないでしょうか。ここでは、メロディーペーブはどうして路面から音が出るのか、なぜ設置されているのか、どこに設置されているのかなど、素朴な疑問にお答えします。

目次

メロディーペーブとは?

メロディーペーブは、日本ではメロディーラインとも呼ばれていて、クルマが一定の速度で走ると路面からメロディーなどが聞こえる道路のことです。メロディーペーブは、メロディー以外にも「スピードを落としてください」などの注意喚起の音が出るものもあります。

国内には約30か所設置されており、世界ではアメリカのザ・ミュージカル・ロード、オランダのシンギング・ハイウェイ、デンマークのアスファルト・フォーン、韓国のシンギング・ロードなど世界各国にも異なる名称で、数多く点在しています。

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アメリカ・カリフォルニア州ランカスターにある「The Musical Road」。ここではロッシーニのウィリアムテル序曲を聞くことができる <出典:ブリヂストン

なぜ道路からメロディーが聞こえるの?

メロディーペーブの路面には、進行方向に対して横向きに浅い溝が複数刻まれています。この上をクルマが一定の速度で走行すると、走行音が溝の中で反響して車内に音として聞こえるわけです。みなさんはザラザラした路面を走ったときに、ザーとかゴーという音が聞こえるのを経験したことがあると思いますが、メロディーペーブでも同じ原理が利用されています。

とはいえ、ただ路面に溝を掘っただけではメロディーにならないので、溝の幅や間隔を変えることで音階や強弱をつけています。具体的には、溝の幅が狭いと小さな音、溝の幅が広いと大きな音になり、また溝の間隔が狭いと高い音、溝の間隔が広いと低い音になるので、この特性を巧みに組み合わせてメロディーを奏でているわけです。ちなみに、クルマの速度が速いと全体的に高い音になり、逆に遅いと低い音が出るので、正しい音階で聞くには標識などで指定された速度で走ることが大切です。

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メロディーペーブは、路面に刻まれた深さ3mm–6mm、幅6mm–24mm、長さ2.9m–3.1mの溝を組み合わせることでメロディーをつくり出している <出典:ブリヂストン

なぜメロディーペーブが設置されているの?

メロディーペーブは、綿密な設計と精密な施工が必要で、手間も費用もそれなりにかかります。では、なぜメロディーペーブが設置されているのでしょうか?

設置の目的は場所や管理する自治体によって若干違いますが、基本的には以下の5つが主な目的になっています。

■ スピード抑制:法定速度で走らないとメロディーが正しく聞こえないので、スピード抑制になる
■ 居眠り防止:突然、路面からメロディーが聞こえてくるので、居眠り防止になる
■ スリップ防止:路面に溝があるので、排水性や摩擦性が高く、スリップ防止になる
■ 快適ドライブ:路面からメロディーが聞こえるので、楽しいドライブを演出できる
■ 観光資源創出:地域にゆかりのある曲目を設置することで、観光資源の創出につながる

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県立榛名公園(群馬県高崎市)、メロディーライン、ゆうすげの道付近

メロディーペーブが設置されているスポットは?

メロディーペーブは、2004年に北海道標津郡標津町道川北北7線に、「メロディーペーブの実用化試験」を目的として設置されたのが始まりです。これは世界発の試みだったので、メロディーペーブは日本発祥の道路というわけです。その後、メロディーペーブは日本各地に広がり、現在は北海道、群馬県、石川県、山梨県、静岡県、愛知県、和歌山県、広島県、大分県、鹿児島県、沖縄県などに設置されています。では、この中からいくつかのメロディーペーブを紹介します。

 

芦ノ湖スカイライン

芦ノ湖スカイラインがある箱根は、関東では高い人気を誇る観光地。周辺には箱根神社、大涌谷、箱根関所、箱根小涌園ユネッサンリゾート、ロープウェイなど多数の観光施設があり、1日では遊びつくせない面白さ、歴史、文化、自然などが詰まっています。芦ノ湖スカイラインには、2か所にメロディペーブが設置されていて、ひとつは「富士の山」、もうひとつは「残酷な天使のテーゼ」のメロディーを聞くことができます。

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芦ノ湖スカイラインは富士山、芦ノ湖、伊豆半島などを望める全線時速40kmの自動車専用道路。往復するとふたつのメロディーペーブを楽しめます

図1

 

榛名湖メロディーライン

群馬県では、音楽を奏でる道路のことをメロディーラインと呼んでいます。高崎市の「静かな湖畔」をはじめ、嬬恋村の「雪山讃歌」、草津町の「正調草津節」、神流町の「こいのぼり」、前橋市の「チューリップ」、桐生市~みどり市の「うさぎとかめ」、上野村の「うれしいひなまつり」、高山村の「星に願いを」、中之条町の「いつも何度でも」、みなかみ町の「四季の歌」など、なんと10か所も設置されているメロディーライン王国。とりわけ、渋川市から伊香保温泉と榛名湖畔を結ぶ榛名湖メロディーラインは、長く起伏のある直線道路が特徴で、周辺の景色も抜群によいので、人気のメロディーラインです。

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群馬県は音楽を奏でる道路が10か所も設置されているメロディーライン王国。メロディーラインをめぐるドライブを楽しむこともできそうです <出典:群馬県庁

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群馬県高崎市にある「榛名湖メロディーライン」。春にはヤマツツジが満開になってとても綺麗です

川手メロディートンネル

愛知県豊田市川手町にある「川手メロディートンネル」は、トンネル内に音楽を奏でる道路が設置されている珍しいメロディーペーブ。ここは名古屋から1時間半ほどで訪れることができるため、東海エリアでは人気のドライブコースのひとつです。近くには温泉施設を備えた道の駅「どんぐりの里 いなぶ」もあるので、近県の方にはオススメのスポットといえます。

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「川手メロディートンネルは、時速50kmで走ると約20秒間にわたって「どんぐりころころ」のメロディーが流れます <出典:一般社団法人ツーリズムとよた

ドライブ中の楽しみをみつけて

今回は、路面が音楽を奏でるメロディーペーブをご紹介しましたが、ドライブをしていて道路から音楽が聞こえてきたら、思わず気分も高揚してしまいそうですね。現在は主に観光地周辺にしかありませんが、今後ドライブや旅行の計画を練る際は、ぜひメロディーペーブのある道路を探して、ドライブコースに加えてみてはいかがでしょうか。

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