
手間をかけて大切に育てる――歩みつづける“自分色のクラシックミニ”との道のり
今回『暮らしとくるま』Instagramフォロワーインタビューでご紹介するのは、ローバー・ミニ(愛称:クラシックミニ)を大切に乗られている、sigma_inoueさん。クラシックミニの小さなボディには、たくさんの魅力がぎゅっと詰まっています。愛車を自分好みに手を加えることで表情や性格が変わるーーそんな特別な存在であるクラシックミニを通じて生まれた人とのつながりや、カスタムを重ねて育んできた“自分色のクラシックミニ”とのカーライフについて伺いました。
目次
歴史あるクラシックミニと過ごす10年
―クラシックミニには、どれくらいの期間乗られているのですか?
2014年から約10年間乗り続けています。私のクラシックミニは、生産年が1996年式のローバーミニなのですが、長い歴史を持つクラシックミニのなかでは比較的新しいモデルです。
なかには生産から60年くらい経つモデルもあり、今でも現役で乗られているかたもいるんですよ。クラシックミニのオーナーはカスタムしている人が多く、ヴィンテージ風にしたり、レーサー風にしたりと自分流に仕上げている人が多いんです。私の場合はクラシックらしさを残して、ヴィンテージ風に仕上げています。

―ボディカラーも、落ち着いた水色でとても素敵ですよね! はじめからこの色なのですか?
ボディカラーは新車時の色ではなく、前のオーナーが塗りかえたもので、「スピードウェルブルー」といいます。古くからの定番カラーですが、淡い色は人間の目が違いを感じ取りやすいうえに、経年変化などにより全く同じ色に再現するのが難しいと言われています。そのため、完全に同じ色のクルマにはなかなか出会っていないです。どれも微妙に色味が違うのです。そんな違いも見て楽しめるクルマです。

一番右がsigma_inoueさんのクラシックミニ
時を超えて、再び迎えたクラシックミニ
―クラシックミニを購入することになったきっかけを教えてください。
実は、今のクラシックミニを迎える25年前に、一度クラシックミニを所有したことがありました。しかし、当時は仕事に追われて忙しかったことや、クルマを2台持っていたこともあり、クルマに向き合う十分な時間が取れず、わずか1か月で手放してしまったんです。その後、何年も経ち、家族と乗るクルマのほかに遊びで乗れる自分のクルマを持ちたいと考えるようになりました。そのときに、もう一度クラシックミニに乗りたいと思ったんです。

―今回は特別な想いがあったのですね。
そうですね。今度こそ手放すことなく、長く大切に乗ろうと決めて購入しました。クラシックミニは「モノ」としてではなくもっと身近な存在、つまりペットや家族のような存在として捉えています。同じ気持ちを抱いているオーナーは多いと思います。
「アナログだからこそ」感じるミニの魅力
―10年も乗ってらっしゃると、たくさんの思い出がありそうですね。
そうですね。クラシックミニには数え切れないほどの思い出があります。例えば、京都へ旅行した際、道中でちょっとしたトラブルがあって、現地にあったオートバックスに立ち寄ったことがありました。親身に対応していただいたおかげで、無事に旅を続けられたことは今でも忘れられません。
これまで長距離ドライブも何度もしてきましたが、各地で出会った人や景色、ドライブ中のできごとも含めて、全てが大切な思い出です。

―たしかに小さなハプニングも、旅の思い出を印象づけてくれますよね。そんなクラシックミニの魅力について教えてください。
ひとことで言えば、アナログならではの“自分色に育てられる”ところが魅力でしょうか。
最近のクルマはコンピューター制御が進み、自分で触れられる部分がほとんどありません。その点、クラシックミニは自分で面倒を見ることができるメンテンナンスもあるので、整備工程そのものを楽しめます。人によっては面倒と感じるかもしれませんが、それこそが私にとっての一番の楽しみでもあるんです。手をかけた部分の変化がダイレクトに感じられるので、より自分だけのクルマになったと感じます。
究極論かもしれませんが……使い方やメンテナンスの仕方によって、クルマの性格さえ変わってくるんです。オイル交換しただけでも走りの違いがわかる、そんな奥深さがあるからこそ、乗るたびに愛着を深めてくれます。

自分の好みに合わせてカスタマイズしたクルマは、ただ乗るだけでも楽しいんです。日常の足としてではなく、クルマの変化や調子を確認しながら乗ること自体が目的になるーー。エンジンをかけて少し走って、気持ちよく帰ってくるだけでも楽しく、満足のできる特別な存在ですね。

クルマを大切に乗り続けられる秘訣
―クラシックミニはとても人気がありますが、年式が古い分、維持するのも大変そうです。実際はどうなのでしょうか?
確かにクラシックミニを維持していくには、新しいクルマより手間はかかると思います。一番重要なのは、クルマのことを知っていて、ちゃんと面倒を見てくれる整備工場やお店があるかどうかです。何かあったときに、信頼して修理を任せられるところが必要ですね。古いクルマですから、過去の修理履歴や今後修理が必要になる箇所をよく分かってくれているところには、安心して任せられます。

―長く乗り続けるには周囲の環境がとても大切なのですね
本当にその通りです。整備工場だけではなくて、今はSNSで情報を交換することもあるんです。例えば、クラシックミニをカスタムする際に部品が見つからなかったとき、インスタグラムやフェイスブックを通じて「このパーツが足りない、どこかに余っていないか」と投稿したら、同じクラシックミニオーナーの方が「あるよ」と譲ってくれたことがあります。そういう方々は本当に長年乗っているベテランの方ばかりで、私はまだまだ教わることばかりです。ミニは60年以上の歴史があるからこそ、長く乗るために、オーナー同士が助け合う文化があるのだと思います。クラシックミニオーナーのみなさんと助け合えるおかげで、今も楽しく乗り続けられています。

クラシックミニがくれた人とのつながり
―クラシックミニがきっかけで生まれた人とのつながりはありましたか?
はい、クラシックミニがきっかけで出会った方はたくさんいます。SNSがきっかけでつながることもありますし、クルマの写真を見て知っていて、イベントで「あ、知っているクルマだ」と声をかけたり、かけられたりすることもあります。特に印象に残っているのは、静岡県浜松市で毎年11月に開催される「Japan Mini Day(ジャパンミニデイ)」です。全国からミニオーナーが集まる最大規模のイベントで、普段会えないような遠方の仲間たちにも会える特別な機会です。そこで知り合った関西の方々に会いに行ったり、ミニの写真を撮ったりするために、自宅がある群馬から京都や大阪、神戸にも何度も行きました。

ジャパンミニデイで出会った京都のパン屋さん「ココキラリ」には、何度も訪れているそう
これからのクラシックミニライフ
―最後に、これからのクラシックミニとの付き合いかたについてお聞かせいただけますか?
これからもずっと大切に乗り続けたいと思います。
古いクルマですが、これまでは遠出や長距離走行をして酷使してきたところもありました。これからは無理をさせず、近場でドライブをして撮影を楽しんだり、塗装の補修や細かいところにも手を入れたりして、おだやかに乗り続けていきたいです。間もなく三菱アウトランダーを迎える予定があるので、旅行や遠出はアウトランダーに任せ、クラシックミニは“心のパートナー”といったようにうまく使い分けていきたいと思っています。

愛車のクラシックミニの横にたたずむsigma_inoueさん。笑顔がまぶしいですね
やっぱり最後に思うのは、“アナログが一番精密だ”ということです。デジタル全盛の時代だからこそ、オイル交換をしただけで乗り味の違いがわかるーーそんなアナログの奥深さがあるクラシックミニを自分のペースで、自分らしく育てていきたいです。これからも多少の手間やお世話も含めて、ゆったりと付き合って、楽しんでいきたいですね。

“自分色のクラシックミニ”と紡いでいく時間
クラシックミニは、最新のクルマと比べたら、メンテナンスの手間がかかるクルマかもしれません。けれど、手をかけたぶんだけ表情を変え、オーナーの心に寄り添ってくれるかけがえのない存在です。小さなボディとは裏腹に、sigma_inoueさんにとっては、人生に欠かせないほどの大きな存在になっています。
ハンドルを握り、エンジンをかけるたびに広がっていくのは、ただのドライブではなく“自分だけの時間”。これからもクラシックミニは、sigma_inoueさんとともに、おだやかで充実した歩みを続けていくのでしょう。
取材協力・写真提供いただいたInstagramフォロワーさん:sigma_inoueさん
